続・リーダーの眼差しの先にあるものは VOL.2

先月、管理職やリーダーに関心のある女性公務員対象の学ぶ場を立ち上げたことを紹介しました。この学びの場は、現在管理職の方だけでなく、関心のある方も対象とすることで、管理職になる前の準備体操になるとともに、管理職という立場でなくても、職場でリーダーシップを発揮する力をつけることを目指しています。

続・リーダーの眼差しの先にあるものは VOL.1

5月に、この学びの場の立ち上げを案内するキックオフイベントを開催し、50名を超える全国の女性公務員が参加。今月は、このキックオフイベントについて報告します。

キックオフイベントでは、「女性公務員のリアル なぜ『彼女』は昇進できないのか」を執筆された佐藤直子さんから、『自治体の管理職として働くうえで、今、気をつけたほうが良いこと』をお話いただきました。

佐藤さんは、最新の研究で、自治体の女性管理職の割合は上昇傾向にあるが、実際どの部署に配属されているのかについて調べました。いわゆる「性別職務分離」の研究は、さまざまな業種で行われていますが、公務では初となります。

性別職務分離とは、職場で重視される価値観が職場で日々作られ、その価値観にもとづいて「上位の仕事」と「低位の仕事」が線引きされていき、「上位」とみなされる仕事は男性に、「低位」とみなされる仕事は女性に割り当てられ、自然に性別によって仕事内容が分けられていくことをいいます。

そのように生み出される違いが人材育成や職務配置にも影響してきます。つまり、その職場で重要視されている職務は、女性には割りあてないので女性と男性の職務経験の差が出てきます。そういった線引きは、影響力のある誰か一人の決定で行われるものではなく、企業風土や職場慣行の中で全体として醸成されていくものと言われているそうです。

そこで、佐藤さんの研究では、ある市の業務を32分野に分けて、2007年と2022年でどの分野に女性の管理職が増えたのかを調べました。すると、女性管理職が「配置されやすい」職務、「配置されにくい」職務の明確な傾向が明らかになったということです。つまり、女性が管理職になる場合、それまでの職位で経験した仕事が割りふられない可能性があります。

女性管理職でも、専門職は比較的連続性のある育成をされていて、本人も中心的な役割を果たしていると認識しています。一方、本庁の一般職の女性管理職は、自分自身を周辺的な役割と認識している傾向が見られます。

例えば、これは配置されやすさとは少し別の要素が関係してきますが、支所で活躍していた女性職員が、50代で、いきなり抜擢人事で本庁の管理職となったが、本庁の仕事の経験がないため力を発揮できず、役割を果たすのに苦労しているということが起きています。また、50代後半で毎回新しい分野に配属されるケースもあり、学び直す余力がなく、疲れ果ててしまっている。こういったことは、女性管理職の配置先がある程度限定されている現状から、うまれているといえるのではないでしょうか。

「女性が管理職になるということは、女性が管理職として計画的に配置されづらい状況も一部ある中では、このようなことがあるかもしれないと思って準備しておく必要がある」ということが、佐藤さんの中での今の時点の理解とのことです。

次に、佐藤さんとこのイベントの主宰団体である「Hamu Canvas(略してハムキャン)」の事務局メンバーのトークセッションを行いました。

専門職である保健師のメンバーからは、「保健師の先輩が管理職になって、経験していない予算や議会対応を突然やることになり、それが原因で辞めてしまう現状がある。本人が望まなくても、管理職になってしまう。佐藤さんの話を聞いて、抜本的な対策は難しいとしても、最悪を想定したうえで自分の管理職のあり方を見つけていく必要があると気づいた。また、女性管理職が増えてもまだまだ、部長や局長で女性が少ない。男性の管理職は人数が多いので、いろんなタイプがいることが分かるが、女性だと人数が少ないので、スーパースターでないと管理職になれないと思ってしまう。佐藤さんが言うように、専門職の管理職は育成されて、自他ともに認める活躍をしている面もある。今後、一般事務職でも増えていくと思っているので、みなさんなりのやり方を見つけてほしい。女性の管理職が増えていくと、組織構造にも影響していくことができるのではないか。」との話がありました。

最後にグループに分かれて、感想のシェアをしました。参加者からは、「自治体ごとに組織の文化が違う。うちの自治体では、部下の意見を聞く風土があって自分のやりたいことができる。」というみんなが羨ましくなるような自治体のお話も。

部長級の参加者からは「新採職員と異動してきた職員を面談の機会を持っている。部長は近寄りがたいと思われがちだけど、話してみたら普通のお母さんみたいな存在なこと、部下がイキイキと働ける応援団長であることを知ってもらいたいから、一人ひとりの個性に合わせて、仕事の面白さや、やりがい、気持ちの切り替えなども伝えるようにしている。」という実践事例が報告されました。

また、別の管理職経験のある参加者からは、「管理職、特に課長職になると裁量権がある。課長補佐になった時の上司が『課長補佐の次は課長。なった時には立場が人を育てるから大丈夫』と言ってくれた。ロールモデルはあまり気にせず、自分なりでいいのではないか。また、引き出しが増えるので、職場の提案制度や横断的なプロジェクトには挑戦してほしい。」とのエールも。

最後に、佐藤さんからも「管理職になると、作業する時間が減って、そもそもこの事業は本来どうすべきかなど考える時間が増える。仕事に深度深く向き合える。また、人材育成もやりやすくなる。私は管理職になって良かった。」と励まされる話がありました。

7月から3月まで2月に1回のペースで、毎回テーマごとの職場の悩みと解決策について共有しあう、ゼミ形式で行います。ゼミ参加者には事前課題として、これまでの職場の経験を事例として提出します。ゼミでは、その中の事例から一つ取り上げて、みんなで解決策を話し合っていきます。

事務局メンバーからは、「このゼミで、思い込まされていたことを相対化できたので、これからは前を向いていけるのではないか。もやもやが言語化されるのが楽しみ。また、どうすれば私たちは行動変容ができるのか。そのためには、まずは自分たちの状況を知る。どうすべきかを共有し、少しずつ広がっていくことは大事。」とのこれからのゼミでの学びへの期待に溢れていました。

ゼミに参加した皆さんのエネルギーがチャージされて、それぞれの職場で力を発揮してくださると嬉しいなって思います。毎回の実践ゼミについても報告していきます。

 

ライターへのはげましのお便りはコチラから

 


〜執筆者プロフィール〜

上木 宇宙(うえき そら)

まんなか世代の公務員。

公務員卒業まで残り10年。

市民が願う「あるべき社会」に近づくような仕事をしていきたい。そして、職員一人ひとりの強みを生かす職場にしていきたいと50歳で決意。

職場の若手職員と立ち上げた「公務員の新しい働き方研究会」や現役管理職やリーダーに興味のある公務員女性の実践的な学びの場「Hamu Canvas(略してハムキャン)」を主宰。

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