人生100年時代、貯蓄などの有形資産はもちろん、お金に換算できない、友人関係や知識、健康などの『無形資産』を今からコツコツと蓄えていきたい。そこで、『公務員』という生き方しながら、『無形資産』を蓄えている方からその秘訣を学びたい。鳴門市役所の黒濱綾子さんにお話を伺いました。
「教えて!『無形資産』の築きかた」VOL9(中)の続きです。
-キャリアのターニングポイントってありますか。
災害の被災地派遣に3回行きました。災害時に命を守ることも当然大事ですが、普段から人が繋がって、様々な社会課題を解決していないと潜在的な社会課題が、災害時に出てくるんですよね。繋がりが大事だなと、被災地に行くたびに思います。
-今後、職場ではどうしていきたいですか。
係長を10年以上していますが、管理職には魅力を感じていません。地域と繋がりながら、地域課題を政策化しながら解決する。議会対応をする管理職よりも、自分はそちらが向いていると思っています。とはいえ、自分がいないと持続しない仕組みはダメだなとも思っています。同僚や後輩を含めた人材育成をして、事業を継続させて、自走させていきたいです。
-なるほど。
私、スピード感を求めすぎなんです。人の気持ちや行動が変わるには、時間やタイミングは大事です。自分はゼロか百しかないので、思ったらすぐにぱっと動きます。それを人にも求めがちなところがあるんですよね。人によっては、時間が立たないとダメだと、最近やっと気づきました。
-公務員は続けていきますか。
公務員だから出来ること、公務員だからこその信頼感があります。私の本来の能力以上に周囲が見てくれていることも。公務員を辞めたいと考えたことはありますが、公務員だからこそできるということを、今はきちんと見せていきたいです。
-家族とはいかがですか。
家庭は、家族みんなが回してくれています。家庭にこれと決まった私の役割はないです。私は助けてもらうのも得意です。「家事は苦手」と言うと、家族みんなが回してくれるし、いろんな人がおかずを持ってきてくれます。職場では、「黒濱さんは事務が苦手だから」と手伝ってもらっています。夫には「わがままで、自己チューなんだから、助けられることに感謝しないと」と、よく言われています。
-娘さんたちとはどうですか。
私が災害のテレビニュースを見ているだけで、「またママ行くよ、絶対!」と娘に言われます。家庭でも弱みをいつも見せています。毎日バタバタしているので、我が家は、いろんな人が助けてくれます。
「てとてとて」のメンバーとは、子どもを預け合いしていたこともあって、子どもたちは、いろんな大人の影響を受けています。いろんな家庭のあり方や働き方を見る機会になりました。上の娘は「てとてとて」のメンバーの代表に憧れています。
-娘さんは、黒濱さんに憧れているのではないのですね。
親子の「縦の繋がり」や友達の「横の繋がり」だけでなく、ちょっと「斜め」の地域のお姉さんやおじさんの影響を受けることも大事ですよね。地方だと職業の選択やロールモデルも限られているので、娘たちにはいろんな情報を与えています。次女は自分で調べて、高校から神奈川に出て行っちゃいました。今は、あちらでいろんな人に育ててもらっています。親の私をどう捉えているかは分からないです。子どもは子供の人生がありますから、自分で切り開いていって欲しいです。
-これからの公務員に必要な力を教えて下さい。
公務員は対人サービスだと思っています。ますますIT化されていくなかで、どんな能力が残っていくのか。地域の人と繋がって、ニーズや潜在化した地域の課題をちゃんと政策にしていく力が求められていくのではないでしょうか。
-公務員のこの先へ一言お願いします。
公務員として、アンテナを高く、繋がりを大事にと、いつも思っています。
私は職場で一番怒られています。部長からも、直接めちゃくちゃ怒られていますよ。人の意見は、一度は素直に聞きます。それが自分を成長させてくれたし、怒られたことは、無駄でなかったという積み重ねがあります。
親からも褒められて育っていないのですが、大事に育てられたという感覚はあります。失敗して、怒られても、それを糧にポジティブに考え、またチャレンジできる。評価軸が他人にあるのではなく、自分の中にある。いろんな失敗をしても、根拠なき自信もありまして。「私ら頑張ってるんじゃない?」って、みんなで笑いながら前に進み続けています。
事務職の人は、異動があってチャレンジする機会がありますよね。それで悩む人もいるけれど、楽しんで、どんどんチャレンジしていってほしいです。私たちは、住民の方に育ててもらっています。失敗したら、やり直せばいいんです。決まった未来ってないですから。
宇宙(そら)の無形資産帳簿
「人に役立ちたい」「無力感」「ゼロか百」「失敗を恐れず」というキーワードが、何度も飛び出しました。黒濱さんの生き方の原動力を表す言葉ですね。公務員としての「信用」を過信せず、市民の方から学び、課題を事業化しようと、チャレンジする姿勢と熱量が、公務員の王道の仕事ぶりです。その仕事のやり方を、黒濱さんの属人的なものとせず、多くの地域で、仕組みとしていきたいものです。
地域でもいろんな役割を期待され、人生100年時代の「無形資産」をたっぷり蓄えています。今後、それをどう活かされていくのか、黒濱さんから目が離せません。
〜執筆者プロフィール〜
上木 宇宙(うえき そら)
まんなか世代の公務員。
元気な100歳、『百寿者』を目指しています。
健康第一、85歳までは働き続けたい。
定年後、私ができる仕事はなんだろう?
人生100年時代、貯蓄などの有形資産はもちろん、お金に換算できない、友人関係や知識、健康などの『無形資産』を蓄えていきたい。
『公務員』という生き方をしながら、『無形資産』を蓄えている方にその秘訣をお聞きします。
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