石の上にも20年Vol.4 引っ越しイヤだ

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3人の娘を育て、みんな大人になって巣立っていった。

空っぽの娘たちの部屋を見ていると「片付けなさい!」と怒鳴ったことや「イヤイヤ期」「反抗期」に眉間にシワを寄せていた頃を思い出す。
先輩の失敗談や励ましに、たくさんの元気や勇気をもらって涙を拭いたことを思い出す。

渦中は言えなかったけれど、子どもが大人になった今だから笑って言える石の上のこと。

【引っ越しイヤだ】

転勤族の我が家。
長女が小1の終わりころ、千葉から佐賀への転勤が決まった。
転勤が決まると子どもも忙しい。
お友達との時間を大切に過ごさなきゃならないから。

私は引っ越しに向けての準備。
子どもが3人いたので、学校や習い事等の手続き以外にも、できるだけ引っ越し先での生活をつつがなく迎えるため、近くの病院やスーパーなどもチェックしておく。

親がバタバタしている中、長女は連日お友達と遊び「お別れの品」をもらってきた。
「手紙書いてね」と便箋と封筒、かわいいペン、ハンカチ、マグカップそして心のこもったお手紙も。

新しいグッズが増えて、小学生女子は日々大盛り上がり。
寂しさはまだ見えていない。
ところが引っ越しの数日前。
友人とのお別れを惜しみつつ帰ってきた娘が泣きながら「引越ししたくない」と言った。
遊びに行く前まであんなにうれしそうだったのに。

話を聞くと、夕方帰宅時間になり「楽しかったね~、引っ越ししてもまた遊ぼうね♪」なんて話した後、娘以外のお友達が「ねえねえ、今度の日曜日どうする?」と、娘が引っ越していなくなった後の待ち合わせの予定をたて始めたって。
そこで初めて娘は「自分がここからいなくなる」ことを実感したらしい。
遅いよ(^^;)

引っ越しがイヤだと言った娘に私が伝えたのは、
転勤族の娘だった私に届く各地からの年賀状を見せて
「ママには日本のあちこちにお友達がいるんだよ。すごいでしょ!」
「日本にはその土地だけの言葉(方言)があって、ママはいろんな土地の言葉が話せるんだよ(ちょっとカッコよく)」
それでも駄々をこねた場合
「イヤなら一人で残りなさい!」

引っ越しを嫌がっていた長女は大人になり、大学のサークルの影響でベトナムに興味を持ち、年に数回渡越した。
日本の言葉だけでなく、他国の言葉も話せるようになった。
全国に友人ができた。

今の私が、当時の私に伝えたいのは
未来に家族が団結できているのは転勤のおかげだよ。
ひとりぼっちの場所に置かれたら仲間がほしい。
新しい土地に行くのは何歳だってドキドキするからね。
受け入れてもらえるだろうか、困ったことが起きた時頼れる人に会えるだろうか。
そんな気持ちを落ち着かせてくれる『家族というチーム』を大切にしようね。

心配を抱えながら人を育てる。まさに育児は育自なのだ。
20年経って、ようやく石の上から降りてみたら、なんとなくまた上がりたくなったりしている。


執筆者プロフィール

細田恭子
さいたま市在住。帝王切開で三姉妹を出産し、
2000年にWEBサイト「くもといっしょに」を開設。帝王切開カウンセラーとして、各地で講座やお話し会を開催。共著『ママのための帝王切開の本』『帝王切開で出産したママに贈る30のエール』(中央法規出版)趣味はミュージカル観劇

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