私は約30年前に初めての帝王切開出産を体験しました。
その後さらに2回体験。盲腸など含めると6回の手術経験があります。
当事者と医療者双方の声を聞いていて思うのは、コミュニケーションの不足と、主役である女性が声を上げられていないということ。
心の奥の怒りとともに「それはそれ、これはこれ」
帝王切開出産の心の処方箋をお出しします。
【ぬくもり】
新しい命を迎える時を夫と一緒に過ごす。
「立ち会い出産」を楽しみにマタニティライフを送っているご夫婦も多いと思います。
私は第一子の出産時、夫に立ち会ってもらいたいとは思いませんでした。
そういう時代ではなかったこともあるし、夫が立ち会ううれしさも理解できなかったから。
それよりも見られるの嫌だな・・という感じ。
(夫が経膣分娩で立ち会いたかったかは不明です)
それが緊急帝王切開になり、立ち会うことが絶対不可能になったわけですが(病院の方針)、もし「手術に立ち会えますよ」と言われても、今度は夫が断ったはず。
なにしろ「血」が苦手。
そんなわけで我が家は、どちらの出産でも立ち会いという選択はなかったわけです。
まだ日本の多くの産院が、帝王切開の場合、立ち会いはできません。
理由はいろいろあると思います。
経膣分娩で立ち会いを希望していたママは、「帝王切開になったから、立ち会い出産ができなかった」ってがっかり。
ここまでは、わかります。
したいと思うことができなかったら、それはがっかりです。
でね、そのあと「夫に申し訳なくて」と涙されるママがいらっしゃいます。
この子が生まれるところを見せてあげられなくて・・・
一緒の時を過ごさせてあげられなくて・・・
ちょっと待って!
がっかりするのはわかります。でもママが申し訳ないって思うのは間違っています。
「申し訳ない」とは自分の過失を認め、詫びの気持ちを伝える言葉だそうです。
愛する人の願いを叶えてあげられなかったから・・?
それはそれです。
あなたは命をかけて手術を受けました。
お腹を切って、赤ちゃんを出産しました。
それを夫に謝る、詫びる必要はまったくありません。
あなたがいない場所で心細かったけれど、命をかけて新しい命を産みました!と胸を張って伝えればいいのです。
たまたまこの方法の出産の時は、その時間一緒にいられなかっただけで、そのあとはぜひずーーっとそばに居てもらって、すべてに立ち会ってもらいましょう。
一番大切な“みんなが無事である感謝”を、どうぞ忘れずに。
「両親学級で、立ち会いのことをしっかり学びました」
「妻も、立ち会うことで安心だと言ってくれます」
そんなパパからの声をお聞きします。
もちろん一緒に赤ちゃんを迎えることができたら、とても心強いでしょう。
でも、お産は何が起きるかなんてまったくわかりません。
緊急帝王切開になって慌てたというご夫婦もたくさんいらっしゃいます。
「先輩パパから、その後の夫婦関係のためにも立ち会ったほうがいいと聞いたんです」
なるほど。
でも、これはこれ。
どうぞ立ち会いのことだけでなく、両方の産み方のことをしっかり学んでください。
帝王切開と決まった時、多くのママは慌てます。
そんなとき、どっしりと「元気に戻ってくるのを待ってるからね」と手を握って応援してほしい。
ママは手の温もりと一緒に、手術室でパパと一緒の時を過ごせるはずです。
そもそも立ち会うことをクリアしたからといって、夫婦関係が良くなるわけではありません。
お互いの気持ちを理解し、寄り添えてこその夫婦の未来です。
どうぞ「温もりとともに」女性自身が心身の健康と笑顔を守っていけますように。
執筆者プロフィール
細田恭子
さいたま市在住。帝王切開で三姉妹を出産し、
2000年にWEBサイト「くもといっしょに」を開設。帝王切開カウンセラーとして、各地で講座やお話し会を開催。共著『ママのための帝王切開の本』『帝王切開で出産したママに贈る30のエール』(中央法規出版)趣味はミュージカル観劇