私は約30年前に初めての帝王切開出産を体験しました。
その後さらに2回体験。盲腸など含めると6回の手術経験があります。
当事者とその周囲の声を聞いていて思うのは、コミュニケーションの不足と、主役である女性が声を上げられていないということ。
心の奥の怒りとともに「それはそれ、これはこれ」
帝王切開出産の心の処方箋をお出しします。
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【出会う言葉で変わる】
9月19日は、我が家の三女の誕生日。
25年前のこの日に3回目の予定帝王切開で出産しました。
長女は緊急で、次女は陣痛が来る中の帝王切開でバタバタだったので、やっと帝王切開をゆっくり味わった出産でした。
出産の少し前のことです。
術日が9/19と決まり、電話で両親に報告すると、父がため息まじりにこう言いました。
「なんだ、ずいぶん9が多いな」
当時60歳くらいだった父には「4」と「9」はあまり縁起の良くない数字だったのでしょう。(日本人あるある)
そして思ったことは何でも口にしてしまう人。
電話口でその言葉を聞いて、私は泣きました。
上の子2人を帝王切開で出産したから、お腹の中の子を「9=苦しめる」ことになるんじゃないかって本気で思ったんです。(ホルモンバランス、恐るべしです)
もちろん今なら笑ってスルーできます。「何言ってるの?」って反論することもできたでしょう。
でも、あのとき「我が子を無事に産まなきゃ」という思いしかなかった私は、もう悲しくて心配で3回目なのに帝王切開を恨みました。
でも、それはそれ。
時間が経ってハッキリ言えるのは、4も9も関係ないということ。
そして帝王切開でも別の産み方でも、無事に会えて笑ったり泣いたり怒ったり戦ったりした毎日がどんなに大切かということ。
子どもはいつか巣立っていくとわかったからこそ、「聞き流す力」をフルに使って、目の前の「今」を大切に見ましょうと伝えたいのです。
さて、父の言葉が悔しくて泣いていた時、たまたま友人から電話がありました。
私が電話口で「今、父からこんなことを言われて・・・」と伝えると、そのママが笑いながら「9/19は最高にいい日だよ」と言ったのです。
「私の誕生日だもん!」って。
そうしたら、わたし笑っていました。
なーんだ。
産み方はどちらでも、一年365日 必ず誰かの誕生日。
だとしたら、親の役目は「この日が誕生日で良かった!」って言ってもらえるよう、全力で育てることだって心のスイッチが切り替わったんです。
生きていると「悪気の無い一言」や「励まそうと思って言った言葉」・・様々な言葉に出会います。
心が弱っていると、相手の思いと違う受け取り方をしてしまうこともあるし、いつもなら聞き流せる言葉ががっつり心に住み着いてしまうこともありますね。
じつは育てている時も、もっといろいろな言葉に出会いました。
「あら~、この子笑わないのね~」と親切な見も知らないおばさまに呆れられたことも。
この件については【石の上にも20年Vol.3「笑顔で挨拶しない」】をぜひ♪
でも、これはこれ
苦しみの途中で出会う人や出会う言葉で 心のスイッチが入れ替わることがあります。
私たちは「受け取り上手」になって、今の自分に必要な人、言葉に出会っていきたいものです。
その言葉が本当に必要かどうかを見極める目を持つこともお忘れなく。
執筆者プロフィール
細田恭子
さいたま市在住。帝王切開で三姉妹を出産し、
2000年にWEBサイト「くもといっしょに」を開設。帝王切開カウンセラーとして、各地で講座やお話し会を開催。共著『ママのための帝王切開の本』『帝王切開で出産したママに贈る30のエール』(中央法規出版)趣味はミュージカル観劇